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通常の還付とは異なり、更正の日の属すべき事業年度開始の日から1年以内に開始する各事業年度の税額から順次控除し、控除しきれない場合に還付することとされた(地方税法第53条第15〜19項、同法第321条の8第11〜15項)。
この改正について、法人道府県民税を例にみると以下のとおりとなる。
相手国において移転価格税制の適用が行われた場合、「租税条約の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例に関する法律」第7条第1項の規定により、大蔵大臣と相手国の権限ある当局の間で租税条約に基づく合意があったときは、法人等は税務署長に対し更正の請求を行い、税務署長はその合意に基づき、その法人等の各事業年度等の所得を基礎として、国税通則法第24条または26条の規定による更正を行うことができるとされている。
このような更正に係る法人税額に基づき、知事が地方税法55第1項または第3項の規定による更正を行うことになるが、この更正によって、法人税割額を還付すべきこととなる。
この還付すべき金額について、平成6年度改正においては、即時還付を行うこととはせずに、知事が行った更正の日の属する事業年度開始の日から1年以内に開始する各事業年度の法人税割額から順次控除することとした(地方税法第53条第15項)。
この更正の日の属する事業年度開始の日から1年以内に開始する事業年度とは、例えば平成8年5月に知事の更正があったとして、その法人が3月決算法人とすると、更正の日の属する事業年度は、平成8年4月1日から平成9年3月31日のそれであり、その事業年度開始の日、つまり平成8年4月1日から1年以内に開始する事業年度は、当該事業年度そのものであり、その事業年度分の法人税割額、つまり平成9年5月末に納付されるべき法人税割額から控除される。
順次控除されると規定されているが、これは半年決算法人を念頭においたものであり、この場合は複数回の控除が行われうる。
なお、還付すべき金額が控除される法人税割額は、確定申告時の法人税割額とされ、外国税額控除、仮装経理による控除、利子割控除を順次行った後、実施特例法に係る額の税額控除を行うこととされる(地方税法第53条第18項)。
中間納付額がある場合にはこれを控除した後の法人税割額額から、実施特例法に係る額の税額控除を行うこと(地方税法第53条第15項)とされる。
このようにして、控除を行い、なお控除しきれなかった金額がある場合においては、その控除しきれなかった金額を還付し、または未納の徴収金に充当することとされるが(地方税法第53条第20項)、この場合の還付加算金の始期については、政令で、当該確定申告書の提出期限の日の翌日から起算して1月を経過する日と、当該更正に係る更正の請求があった日の翌日から1年を経過する日のいずれか遅い日からとすることとしている。
この結果、地方団体は、年度途中による補正予算による還付を行うという事態を避けることが可能となり、若干の時間的余裕をもって移転価格税制への対応的調整

 

 

 

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